アイヤッパへの道 vol.6

2017.07.19 (Wed)
第6話 盲目の音楽家

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今年の正月はインドで、尚且つインドのインフルエンザで一月一日から寝込んでいました。
ホテル内は来賓のお客で大賑わいしている中、独り青い顔で寝込んでいる日本人、
今年は元旦から何もかもが普通とは違います



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2017年、病み上がり最初の食事
日本人はお蕎麦でしょってことでお勧めで出てきたけど、麺にはうるさい日本人だから・・・
申し訳ないけどやっぱり正月は雑煮ですね



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そのうち部屋が満室ということで移動することに
一部屋を一人で独占することはできないのでみんなと相部屋に
彼らインド人はそれこそ雑魚寝には慣れていて逆に一人で寝ることのほうが少ないくらい
病人なのでベットは何とか確保できましたが寝ているそばから連日のパーティーで酔っ払って帰ってきたのが床で寝るわ鼾はかくわ、頼むからクーラーだけはかけないでねとあれだけ言ったのに凍えるくらいにクーラーかけ始めてインドでも東南アジアでも馬鹿みたいに冷房をかけておかげで旅行のたんびに体調を崩すという経験は旅慣れた人なら一度や二度は経験しているはず。このままでは本当に殺されてしまうと、今夜はもうベットで寝るのはあきらめよう。毛布片手に部屋を抜け出して廊下のソファーにシーツにてくるまって熱い体を休めていたら、いったいなんでそんなとこに寝ているととがめられ、これこれしかじか、やんごとなき理由を話しまして、それだったらこっちの部屋でおやすみなさい、先客がいるけど彼は冷房かけないから。

寝ている先客を起こさないように真っ暗な中忍び足で指定された部屋のベットに。荷物は明日取りに行けばいいし、とりあえずこのまま寝てしまいましょう。暗闇の中電気も点けづにこっそりと、でもよくよく考えてみたら同室になったのは目の見えないお目くらさんのミュージシャン。電気つけようがつけまいが一向に関係なかったんです。





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おかげさまで次の朝は昨日よりもだいぶ調子が戻って、のどは相変わらず痛いけれども気持ちよく目覚めることができました。隣のベットでは先客が何も知らずにすやすや眠っています。テレビをつけるわけにもいかず、シャワーを浴びることもできず、ただぼけっと外を眺めていますとのど元がむずむずと、ついに我慢しきれず、喉の底の胸の奥から大きな咳を続けざまにこんこんと。突然の咳の音で起きてしまった同居人、もぞもぞとシーツの中で寝返りを打ち半身を引き起こして「誰ですか?」と虚空を見上げて問いかける。

「私はジャパニ、おはようございます!」

その時の彼のあわてっぷりったらなかったです。「あ、いや、日本人、これは、その、とんだことで、こりゃ大変、大変な失礼を・・・・」
今まで寝ていたベットから飛び起きて、まるで宙を泳ぐように手足をバタバタさせて、最終的にはベットの上で正座してしまいました。その様子を腹を抱えて笑う私は、咳と笑いでむせ返りながら自分の名前とあいさつと、そんなに慌てなくていいですよと彼をなだめるのとをいっぺんにしなければいけませんでした。



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同室のよしみ、これからしばらく、どうぞよろしくお願いします

彼は音楽の教師で、でも正規雇用ではないので暮らしはなかなか厳しいそうです。子供が一人いて奥さんも優しい人。
どこの国でもそうですが特にインドだとハンディキャップのある人にはとても親切な印象があります。目が見えないのも、足が不自由なのも神様のお考え、神様が与えた何かのしるしのように神聖視することもあります。
お目くらさんといえば私の好きな作家、内田百閒の作品にちょくちょく顔を出す宮城道雄を思い出します。いわずと知れたお琴の大家で百閒とは親友の中、幼少のころに失明し百閒は彼のことを『お目くらさん』と親しみを込めて呼んでいます。百閒が彼の家に行くといつも部屋は真っ暗で右も左もわからない、その様子を宮城検校は、健常者というものは誠に不便ですね、と揶揄します。



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事あるごとに彼の世話をし、彼も安心して私に何かを頼んでくる
風呂場の歯磨き粉を取ってあげたり、笛がニ十本も入っている重いバックを持ってきてあげたり。こんなことを言うととても僭越ですが人の役に立てるのは至極気持ちのいいこと、正月から思わず心安らかな平和な日々を新しい友と過ごすことになりました。



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夜は初詣、なのかな?
インドに初もうではあるのか知らないけど、だいたい事あるごとにお寺に行きますから初も最後もないのかもしれませんけど、私としては心新たに迎える新年ですから何かいいことがあるようにと強くお願い申し上げます



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この旅は観光地というものにまず縁がない旅行なのでインド紀行としては物足りないかもしれませんがしばしお付き合いを
それでは今夜はお話の最後に彼の演奏を聞いてください。
路傍の花売りも、海岸の魚屋も、盲人の笛吹きも、今は遠く離れた友人たちに思いをはせて
















最後は音楽の先生によるかわいい授業












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コメント
インドのインフルエンザって
普通のとは違うの?
旅行先で病気になると切ないよね~
お蕎麦が回復食(笑)
カレーの方がスタミナ付きそうだけど
精一杯の心使いだったのでしょうね。

私は残念ながら海外は寒いところしか行った事ないけど
インドとかトルコとか行ってみたいな~
ROUGE | 2017.07.20 13:01 | 編集
ROUGEさん

インドのインフルエンザは全然違いますよ、鳥インフルエンザ、豚インフル、牛インフル、コブラインフル、未知のウイルスがきっとうようよしています。冗談はさておいてほんとにつらかったです。今までこんなに胸の奥まで風邪ひいて苦しかったことはなかった、二か月近く咳がやみませんでした。
インドのシェフってインド料理しか作れないので技術者としてはピカ一なのでしょうが料理人としての芸術家としてはどうなのかなといつも思ってます。これ、ほかの業種でもインド人全般に当てはまることかなと

インドとトルコ、ずいぶん違うような気がしますが私は断然トルコ行きたいです。まだ行ったことないです
もしインドで一か所だけしか行けないとしたらハンピ、ハンピは今まで行ったインドの中で断然いいです
sukunahikona | 2017.07.20 17:32 | 編集
体調不良でもとにかく乗り越えちゃうエネルギーがすごいですね。はらはらしながら読みました。ご無事で何より。
ハンディのある人ことを、英語でもチャレンジドと表現して、障がいは神様から与えられたものと受けとめてるみたいです、あるがまま・・・受容って大事だなあ。
ビデオのおとこのこ、かわいいですね、でんぐりがえしとか。
最後のおんなのこも、かわいい。子どもって見てるだけで笑顔になっちゃいます。うれしいなー。ありがとうございました。
ナカリママ | 2017.07.21 16:57 | 編集
ナカリママ さん

体調良ければもっと暴れまわれたんですけどこのくらいがちょうどよかったかもしれません。少しおとなしいくらいが私の場合ちょうどいい。
チャレンジドっていい言葉ですね。障害のある人と付き合うのはやはり気を使いますが気を使いすぎるのもなんだかおかしいしあるがままにお互い受け止めるのがやっぱりいですよね。本文であえて『お目くらさん』という言葉を使いましたが私は言葉狩りが大嫌いで視覚障害者とか呼び変えるのがとても気味悪く思ってます。余計に差別の仕組みの裏側までその方に背負わせているみたいでより一層差別的な表現になりつつあると感じています。
ちょっと話がそれましたが彼との交流は今思い返しても心の和む小さなひと時でした。
子供は元気ですよ。はしっこいし物おじしないしそれでいてつつましいとこもあって、親だけでなく親類から友達からみんなで育てているという環境があんなに素直な笑顔を作ってるんだなと思います。
sukunahikona | 2017.07.21 20:28 | 編集
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