本宮一 建御柱 事故

2016.05.24 (Tue)
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青空に天高く立ち上がる本宮一之御柱
それは本当に素晴らしく誇らしい風景でした



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その日は空はすっきりと晴れ渡って入るのですが時折強風の吹き荒れるいやな天気でした
こんなに強い風の中、いったい無事に御柱が建ちあがるのか、皆、口には出さないけれどきっと同じ心配をしていました



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長く、厳かな神事の後、斧取りによる冠落しの儀が始まりました
一時間をかけて御柱の頭を三角錐に切り落としてゆきます



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その間を木遣りがなき、ラッパ隊が斧に力を与えます

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古風なお祭りに軍隊式の突撃ラッパ
最初は非常に異様な、奇妙な違和感を感じました
そもそも喇叭隊も新しいものなんだろうと思いいろいろと老人たちに聞いてみるとやはり戦時中から導入されたスタイルのようです
御柱祭りは戦前戦中もとだえることなくここ諏訪の地で行われていました
しかし、戦争でほとんど多くの成年男子が兵隊にとられてしまう中、女子や老人だけのお祭りでは寂しかろうと祭りに威勢を加えるために街の消防団がはじめたのが喇叭隊の始まりだそうです
今では御柱祭りにはなくてはならない存在になっています






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祭の喧騒とは裏腹に、境内は参拝者もなくひっそりと静まり返っています


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時折吹き荒れる強い風に、山がどーどーとなっています



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諏訪大社は神殿のない原初的な様式を保つ神社
他社と比べてこじんまりとした質素なつくりではありますが、おのずと居住まいを正す厳かさがあります





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いよいよ、運命の建て御柱が始まります


先ほどまでの風もピタリとやみました
これは吉報なのでしょうか
その時はだれもがそう思っていたはずです




運命のと書いたのはこの後事故が起きてしまったからです
全国放送で日本中の人が知ってる事実なのでここに書いています
しかし私が改めて書いているのは何のためなのでしょう。こうして書いている間も自問自答するばかりです
きっと自分のために書いている。そう思うようにします。あの時の景色が胸につかえるとげのようにいつも心に引っかかっています
書くことで忘れることはないでしょうが、書かなければ前に進めない
読んでいただいているみなさんのために書いているのとはきっと違うのだと、自分の身勝手から描いているのだと思います



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二時間かけてゆっくり立ち上がってゆく巨大な柱、
まさに見事の一言でした。
青い空にオンべの赤い房の色、揺れる木の葉の間に命や時間やこの世のすべてのものが凝縮し集まり形になってゆく。
ラッパや、木遣りや人々の歓声に割れんばかりの境内なのにとても静かな恭しい光景です。



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見事直立する御柱
奇祭、諏訪の御柱祭り
氏子たちの思いが形になった瞬間です







後記
もし、あんなに大勢乗らなかったら、もし二時間もかけなかったら、もし最初の時間から乗っていなければ、もし御柱の縄足場撤去を建てかたの鳶がやっていたら、もし警察が時間厳守などといわなかったら、もし下にパワーシャベル機が置いていなかったら、もしヘルメットをかぶっていたなら
あんな事故にならずに済んだかもしれません
私は若いころ鳶もやった身です。片付け作業、撤去作業を行うときは細心の注意を払います。撤去作業は建てるときよりも数十倍恐ろしい、それこそ何が起きるかわからないのです。ですから、落ちた時にきっと立て方の職人が落ちたのだと思っていました。それならばただの不注意、業務上伴う仕方のないことかもしれない、そう思うようにしました。しかしまさか、なにも知らない素人に(失礼な言い方かもしれませんが)やらせていたとは夢にも思いませんでした。それを聞いたとき、いくらお祭りでもと怒りがわいたものです。
すべてが終わり、大総代の「99%は今まさに無事に終わりました、あと一パーセント事故のないようにお願いします!ありがとうございました!!」先ほどの万歳三唱でこの祭りは幕を下ろすはずでした。
昼間食べられなかった弁当を食べ終わり境内に踵を介した瞬間、「ドーン」という大きな地響きが起こりました。
『落ちた!!』
瞬時に判断したのは以前経験したことがあるから、あんな音は人が落ちるほかに聞いたことがありません。
御柱をけん引したワイヤーが揺れています。皆が柱を見つめたまま固まっています。女性が涙目で彼のはっぴに顔をうずめています。顔色を変えて駆けつける若者たち。男泣きに泣いている人もいます。
ああ、本当の事なんだ。
同じ村の先輩の足元に落ちてきた、その彼は、『きっと駄目だろう』と青ざめた顔で言っていました。近所でも幸い私の知った人ではなかった。だから、今回掲載した写真に写っていたとしてもわかりません
ついにいたたまれなくなり境内の外に出ました
「飲んできます」
昼間、仲間と一緒にこっそり抜け出して、生ビールを飲んだ大きな広間
夕日の中、今座っているのは私だけ
缶ビールを飲みながら涙が出てきました。最後の最後に御柱を穢してしまった悔しさと、のんきに弁当を食っていた間中、彼は一生懸命柱の上で自分の役割を果たそうとして必死だったことへの申しわけなさと。

最後の写真ありますね
あの時、あの柱の前にかかった境内の木の枝を切り落としました
随分乱暴なことをするなと思ってみてましたが誰かが指示したのでしょう
その木を切ったのが彼だったそうです

















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コメント
大変だからこそ完成した時がすばらしい、人を感動させる
それだけ難易度が高いという事
全てに当てはまります
登山をしていても、素晴らしいところほど何かあります。
ご冥福をお祈りします。
いぼ仙人 | 2016.05.24 22:16 | 編集
登山も危険と隣り合わせですからね
こうやってコメントいただけると少し気持ちが楽になります
sukunahikona | 2016.05.24 22:42 | 編集
こんばんは。

大変な経験をされましたね。
このニュースは、仕事中にラジオで聴きました。
sukunahikonaさんが参加されてたので、背筋がゾッとしました。
枝を切ったのが災いしたのか、運命なのか、
防ぐ事は出来ないものなのでしょね。
ご冥福を祈るばかりです。

今日、たくあんとお米が届きました。
「苦労の結晶」、ありがたく戴きました。
茶色い方のたくあんが好きです、美味しかったです。
ありがとうございました。


kotobuki | 2016.05.24 23:22 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2016.05.25 09:05 | 編集
ラッパ隊の演奏は、私もかなり違和感を覚えましたが、部外者の意見よりも、やはり実際にお祭りをやっている方々が是とするならそれでいいのでしょうね。
そしてそれがもう70年も続いているのでしょうから、もう欠かせないものとなっていると思います。

御柱を立てるのに2時間もかかったというのは知りませんでした。
それじゃあ柱に乗っている人の負担は、大変なものなんでしょう。
残り1%という所で、死亡事故という結末は、本当にやるせないですね・・・
sower | 2016.05.26 12:33 | 編集
ラッパ隊、どうして軍隊のラッパが?なんて思ってた疑問が氷解しました。最初に見聞きした時異物感があって印象に残ったんだけど、それなりの独特の雰囲気を付け加えていてまったく余計なものとは思わなかったです。
昔の形態そのままに継承していくのもいいんだけど、継承途上でその時代の形を取り込んでいくのも意味があるんでしょう。
柱の上に人が上った形で、それも結構な人数がつかまった状態で立てていく様は迫力があってお祭りの気分も高揚していくのがわかります。荒ぶるお祭りで、ある種命がけを承知という部分もあると思うけど、実際に事故が起きてしまうと神事であるゆえに考えてしまうことも多そうです。
薄荷グリーン | 2016.05.26 20:28 | 編集
言葉がないとはこのこよですね
くんざん | 2016.05.26 21:34 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2016.05.26 23:47 | 編集
kotobukiさん

いろんなことが重なって最悪の結果になってしまいました
ワイヤーに引っかからず下に重機が置いていなければなくなることはなかったと思います

お米おいしくいただいてください
というかコメントしずらい記事でごめんなさい
sukunahikona | 2016.05.31 19:39 | 編集
鍵コメさん
ありがとう
ぜひ次回はおいでなすって
sukunahikona | 2016.05.31 19:41 | 編集
sowerさん
ラッパ隊がないとやってるほうは拍子抜けです

二時間かけてというのは昔からだそうです
かなり問題になったようなので次回は変わるんではないかなと思います
sukunahikona | 2016.05.31 19:44 | 編集
薄荷グリーンさん

諏訪大社自体が護国神社で戦争の神様ですから
因みに現役護衛艦 しらねの艦内神社は諏訪大社なんだって
御柱が好きで参加するときに一筆書くけどまさか自分が死ぬとは思っていないでしょうからその無念さは測りがたいです
sukunahikona | 2016.05.31 19:50 | 編集
くんざんさん

その通りですね。あれからすっかり御柱は話題にも上りません
黙して語らずというのは私はできませんからこのように書きました
それがいいことか悪いことかは全く分かりませんし考えないようにしています
sukunahikona | 2016.05.31 19:53 | 編集
鍵コメさん

コメントありがとうございます
いろいろ考えますがきっと変わらず続けていかなければならないんだと思います
伝統というものの当事者になるということがどういうことなのか
今回のことで肝が据わった感じです
sukunahikona | 2016.05.31 19:58 | 編集
運命ってあると思う。
岸和田だんじりでも死亡事故が起こります。
「祭りで死んだら本望」だとも言われてますが、やはりやりきれない気持ちになります。
次回以降に今回の教訓が生かされますように。
故人のご冥福をお祈りしています。
カレーリーフ・久美子 | 2016.06.02 07:22 | 編集
カレーリーフ・久美子さん

祭りで死んだら本望
そうはいってもその瞬間は無念でしたでしょう
必死につかまって体が伸び切って落ちたと聞きました
その瞬間を見ずに済んでよかったとさえ思います
sukunahikona | 2016.06.04 14:05 | 編集
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